9月6日の花:ナスタチウム(Nasturtium)
ナスタチウム(Nasturtium)に関する説明
ナスタチウム(学名:Tropaeolum majus)は、ノウゼンハレン科トロパエオルム属に属する一年草または多年草です。南アメリカ原産ですが、現在では世界中で観賞用や食用として広く栽培されています。
ナスタチウムの最も特徴的な部分は、その鮮やかな花と独特の葉の形状です。花は直径約5センチメートルで、5枚の花弁を持ち、オレンジ、赤、黄色などの暖色系の色彩が特徴的です。花の形状は不規則で、後方に細長い距(きょ)と呼ばれる突起があります。この距には蜜が含まれており、蝶や蜂を引き寄せます。
葉は円形で、中心から放射状に葉脈が広がる特徴的な形状をしています。葉の表面には水をはじく性質があり、水滴が葉の上で真珠のように輝く様子は非常に美しいです。
ナスタチウムは、つる性の植物で、地面を這うように広がったり、支柱に絡まって上に伸びたりします。高さは種類によって異なりますが、通常30〜200センチメートルほどになります。
花期は長く、適切な環境下では春から秋まで咲き続けます。また、寒さに弱いため、寒冷地では一年草として扱われることが多いです。
ナスタチウムの大きな特徴の一つは、植物全体が食用になることです。花、葉、種子のすべてが食べられ、ピリッとした辛味が特徴です。サラダやガーニッシュとして利用されるほか、種子はケッパーの代用品としても使われます。
園芸的には、その鮮やかな花と長い開花期間から、花壇や hanging baskets、グラウンドカバーなどに適しています。また、コンパニオンプランティングにも利用され、害虫を寄せ付けない効果があるとされています。
「ナスタチウム」という名前は、ラテン語の「nasus tortus」(ねじれた鼻)に由来します。これは、花や葉を食べたときの刺激的な味わいが、鼻をねじるような感覚を引き起こすことに由来しています。
ナスタチウム(Nasturtium)の花言葉
ナスタチウムの花言葉は「愛国心」(英語:Patriotism、韓国語:애국심)です。この花言葉は、ナスタチウムの鮮やかな色彩が国旗の色を連想させることや、困難な環境でも強く育つ性質から来ています。
また、ナスタチウムには他にも以下のような花言葉があります:
- 「征服」:つる性の植物が周囲を覆っていく様子から
- 「勝利」:厳しい環境でも育つ強さから
- 「慈愛」:食用として人々の健康に寄与することから
- 「情熱」:鮮やかな赤やオレンジの花色から
これらの花言葉は、ナスタチウムの特性や人々がこの花に対して抱くイメージを反映しています。
ナスタチウム(Nasturtium)に関連する話
ナスタチウムは、その美しさと有用性から、多くの文化や歴史の中で興味深い役割を果たしてきました。
ナスタチウムの原産地である南アメリカでは、インカ帝国の時代から重要な植物として扱われていました。インカ人は、ナスタチウムを「血の花」と呼び、その赤い花を神聖視していました。また、薬用植物としても利用され、傷の治療や解熱に用いられていたとされています。
16世紀にスペインの探検家によってヨーロッパに持ち込まれたナスタチウムは、すぐに人気を博しました。特に、フランスのルイ14世は、この花を非常に気に入り、ベルサイユ宮殿の庭園に大量に植えさせたと言われています。
18世紀のスウェーデンの植物学者カール・フォン・リンネは、ナスタチウムの花の形状が兜や盾を連想させることから、属名を「トロパエオルム(Tropaeolum)」と名付けました。これはギリシャ語で「戦利品」を意味する言葉に由来しています。
第二次世界大戦中、イギリスでは食料不足を補うため、「勝利の庭」運動の一環としてナスタチウムの栽培が奨励されました。栄養価が高く、育てやすいナスタチウムは、戦時中の重要な食料源となりました。
文学の世界でも、ナスタチウムはしばしば登場します。例えば、アメリカの詩人エミリー・ディキンソンは、ナスタチウムを「赤毛の反逆者」と呼び、その鮮やかな色彩と強い生命力を詩に詠んでいます。
現代では、ナスタチウムは食用花としての人気が高まっています。特に、オーガニック料理やエディブルフラワーの分野で注目を集めており、その独特の風味と鮮やかな色彩から、高級レストランのメニューにも登場することがあります。
また、ナスタチウムの持つ自然な殺虫効果に注目が集まっています。特に、有機農法において、ナスタチウムをコンパニオンプランティングとして利用することで、農薬の使用を減らす試みが行われています。
ナスタチウムをテーマにした詩
鮮やかな花弁 太陽の色を纏い
勇気の象徴 庭に咲き誇る
円い葉に宿る 朝露の真珠
自然の神秘 そっと語りかける
辛味を秘めた 花と葉の味
生命力溢れる エネルギーの源
征服者の如く 這い広がりて
新たな地平 目指す冒険者
戦時の記憶 胸に刻みつつ
平和な日々に 感謝を捧ぐ
愛国の心と 慈愛の精神
小さな花に 大いなる意味を見出す
ナスタチウムよ 教えておくれ
困難に立ち向かう 不屈の精神を
そして 美しく咲きながら
人々に寄り添う 優しさの秘訣を
この詩は、ナスタチウムの特徴である鮮やかな花色、円形の葉、つる性の成長、そして食用としての利用を表現しています。同時に、「愛国心」という花言葉に込められた意味や、この花が象徴する征服、勝利、慈愛、情熱といったテーマも織り込んでいます。
ナスタチウムは、その鮮やかな姿と強い生命力を通じて、私たちに多くのことを教えてくれます。困難に立ち向かう勇気、新しい環境に適応する柔軟性、そして美しさと実用性を兼ね備えることの大切さ。これらは、現代社会を生きる私たちにとっても、非常に重要な教訓となるでしょう。
次にナスタチウムの花を見かけたら、ぜひ立ち止まってその姿をじっくりと観察してみてください。鮮やかな花弁、水滴をはじく葉、そしてつるが伸びていく様子など、多くの発見があるはずです。そして、この花が静かに語りかける物語に耳を傾けてみてください。きっと、あなたの心に新たな気づきや感動がもたらされることでしょう。ナスタチウムの姿を通じて、自分自身の中にある強さや適応力、そして他者を思いやる心を再認識できるかもしれません。